擁壁
ようへき
擁壁とは、傾斜地の土砂崩れを防ぐための壁です。
擁壁とは、
切り土や
盛り土をした斜面に、土の圧力で土砂が崩壊しないように斜面を補強した壁です。擁壁が十分に強固でなければ、長雨や地震などで土砂が倒壊する危険性があるため、擁壁については
建築基準法などで細かな規定が設けられています。
擁壁のタイプには、練石積み・コンクリートブロック積み擁壁、重力式コンクリート擁壁、
鉄筋コンクリート擁壁があります。これらの擁壁は、土の圧力に耐える構造に加え、強度を維持するために、水はけや水抜きが適切に行われるよう水抜穴(3m
2に1ヶ所以上・内径75mm以上)などが設置されています。
擁壁の強度については、問題が生じていないかチェックすることが重要です。擁壁上の排水が良好か、水抜穴のつまりや破損はないか、ひび割れや
不同沈下(ふどうちんか)、擁壁のふくらみ、傾斜などを観察し、異常が見られたら、早めの対策が必要です。
建築基準法
建築基準法とは、建物を建てるときの基本的な法律です。建築物の敷地・構造・設備・用途の最低基準を示し、用途地域や日影規制などエリアによって守るべき事項などが定められています。建物の利用者や近隣住民の生命・健康・財産を守ることを目的に、1950年に施行されました。基準の具体的な技術水準などは、建築基準施行令や施行規則などで詳細が規定されています。また、基準が実効性をもつように、着工前の建築確認や工事中の中間検査、完了検査、違法建築物の是正措置なども定められています。
建築基準法はこれまでに何度も改定を重ねています。1981年には現在の耐震基準が導入、2003年にはシックハウス対策の規定導入、2007年には耐震偽装事件を受けて建築確認審査の厳格化が図られました。中古マンションを選ぶ際には、いつ建てられたかによって基準が異なるため、築年は大まかな安全性を見るときの一つの目安にもなります。
鉄筋
鉄筋とは、鉄筋コンクリート造の建築物に使用される構造材です。鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートが一体となったもので、直系1~3cm程度の鉄筋を針金で縛るなどの方法で格子状に組み合わせ、コンクリートの中に埋め込み、引張力に弱いコンクリートを補強します。
鉄筋は圧縮には弱く、引張に強い性質があり、コンクリートは圧縮に強く、引張に弱い性質があり、両者の弱点を補い合うことで高い強度を獲得します。また、鉄とコンクリートは付着性がよく、コンクリート中の鉄筋はサビにくく耐久性にも優れます。
鉄筋にはその形状から、断面が丸い丸鋼と、コンクリートとの付着をよくするために表面に突起などの付いた異形棒鋼の2種類があります。また、鉄筋同士をつなぎ合わせる方法は、針金を巻いて縛る重ね継手と呼ばれる方法のほか、金物やネジでジョイントする機械式継手などがあります。
不同沈下
不同沈下とは、地盤や建物の基礎が、場所によって不均一な沈下が生じることで、これによって建物に亀裂が入ったり、基礎の破損や建物が傾くなど、大きな被害が発生することがあります。
不同沈下では地盤の沈下が水平でないため、建物が傾くと部分的に荷重が加わり、ねじれによって損傷を受けたり、柱や梁など構造にも影響を及ぼすことがあります。
不同沈下の原因には、軟弱地盤に荷重の偏った建物が立っている場合、造成地における切り土と盛り土の境界などで十分に締め固めできていない場合、建物の下の軟弱地盤の厚さが一様でない場合、雨水や地下水の浸透や汲み上げで地盤が動く場合などがあります。
不同沈下は建物倒壊の危険もあるため、地盤補強工事などの対応が必要です。
盛り土
盛り土とは、傾斜地や低地を宅地造成するときに、土砂を盛って平らな敷地にする造成です。宅地造成には、斜面を削って平らにする「切り土」と、古い地盤の上に土を盛って平らにする「盛り土」があります。「切り土」の地盤は比較的安定していますが、「盛り土」は十分な締め固めができていないと、地震や大雨などで地盤が緩み、地滑りや液状化を起こす危険があります。また、建物の重さによって不同沈下を起こすことがあります。
過去の災害でも、「盛り土」での被害は少なくありません。宅地造成規制法によって規制区域内の宅地造成には都道府県知事の許可が必要ですが、同法が施行された1962年以前の造成については規制がありません。
なお、大規模盛土造成地について情報公開している自治体もあります。敷地の安全性を確認する上では、不動産会社や自治体に問い合わせることも、一つの方法です。
地盤の強度が不十分であれば、地盤改良工事が必要となります。
切り土
切り土とは、傾斜地を宅地造成するときに、斜面を削って平らな敷地にする造成です。もともとの地面を削るので、地盤の強度は維持されるといわれています。
また、宅地造成では、切り土で出た土を盛り土に使うことも多いようです。
切り土の場合も、高さが2mを超える崖が生ずる場合は、宅地造成規制法によって規制区域内の工事には都道府県知事の許可が必要です。
豪雨や豪雪による落石や崖の崩壊などに対して、切り土がどの程度の安全性をもつかは、土壌の質や形状、擁壁の状況によって異なります。