準耐火構造
じゅんたいかこうぞう
準耐火構造とは、建物の主要構造部分が通常の火災による延焼で、想定時間内に建物が倒壊しないように抑制する構造です。
準
耐火構造とは、建物内外の通常の火災に対して、構造体が時間をかけて燃焼することで、想定時間(45~60分)中に建物が倒壊しない構造です。防耐火性能は、その基準の厳しさの順に、耐火建築物、準耐火建築物、
防火構造として規定されています。
耐力壁・
柱・床・
梁などの主要な構造部分および軒裏は45分間、
屋根や階段などは30分間が想定されています。屋外に火を出さないために、燃焼のおそれのある部分などには厳しい規制があります。
木造住宅では、
石膏ボードなどで被覆する方法や、木材の表面が燃えても構造耐力上支障のない「燃えしろ設計」にする方法もあります。
木造3階建てや
準防火地域で要求される構造です。
準防火地域
準防火地域とは、都市計画法で指定された地域の一つです。市街地における火災の危険を防ぐために、防火地域に準じて、建物の構造などを規制しています。地階を除く階数が4階建て以上または延べ床面積が1,500m2を超える建物は、耐火構造としなければなりません。延べ床面積が500m2超1,500m2以下の建物は、耐火構造または準耐火構造にしなければなりません。3階建ての建物は、耐火構造、準耐火構造または外壁や軒裏を防火構造にするなどの一定の技術基準に適合する必要があります。通常の木造平屋建てや木造2階建ては建築できます。
石膏ボード
石膏ボードは、焼き石膏に軽量材を混ぜて加圧形成し、その両面をボード用原紙で被覆して板状態にしたものです。プラスターボード(Plaster Board)ともいいます。
石膏ボードは、耐火性、断熱性、遮音性、加工性に優れ、また、芯材の石膏が熱や湿気による収縮性が少ないために寸法変化がほとんどないなどの特性があります。軽量でコストパフォーマンスもよく、壁や天井などの下地に使用されます。
用途によって、化粧石膏ボード、耐水・防火石膏ボードなどがあり、また、構造材として準耐火構造に対応する強化石膏ボード、防湿ボード、防音ボードなど機能が付加されています。
耐火構造
耐火構造とは、通常の火災が終了するまでの間、火災による建物の倒壊や延焼を防止するため、一定の技術水準に適合する建築物です。防耐火性能は、その基準の厳しさの順に、耐火建築物、準耐火建築物、防火構造として規定されています。耐火構造は、外壁、間仕切り壁、柱、梁、床、屋根、階段などの主要な構造部分について、各部位ごとに耐火時間が指定されています。例えば、耐力壁では階数により1~2時間、柱や梁は1~3時間、屋根・階段が30分などです。延べ床面積が3,000m2を超える建築物などは耐火構造が義務付けられています。
なお、分譲マンションなどは、耐火構造を当然ながら有する耐火建築物です。
防火構造
防火構造とは、建物の周囲で発生する通常の火災による延焼を抑制する構造です。防耐火性能は、その基準の厳しさの順に、耐火建築物、準耐火建築物、防火構造として規定されています。防火構造は準耐火建築物とは異なり、建物内で発生する火災は考慮されていません。
防火構造は、準防火地域内の木造建築物に要求される構造です。具体的には、建物の外壁、軒裏、開口部に防火対策を施し、火炎におかされても30分以上耐えられるようにすることです。耐力壁である外壁は、耐火構造または準耐火構造であることと定められています。または、鉄鋼モルタルや石膏ボードを張ったり、土蔵造、土蔵真壁造などにし、延焼によっても30分間は倒壊その他の損傷が生じない性能が必要です。耐力壁以外の外壁や軒裏は、準耐火構造または土蔵造または防火被覆が設けられた構造にする必要があります。
耐力壁
耐力壁とは、建物自身の重さや積雪などによる上からの荷重(鉛直力)と、地震や台風などによる横からの力(水平力)に対抗して、建物を支えるための壁のことです。このような外力に対して建物が安全な構造となるように、筋交いを入れたり、構造用合板を張った壁を耐力壁といいます。
必要な耐力壁の量(必要壁量)は、建物が重くなるほど、床面積が広くなるほど大きくなります。また、形状によっても必要壁量は異なり、細長い建物などでは必要壁量も多くなります。耐力壁の強度を壁倍率といい、壁倍率を増やすことで耐震性を高めることができます。加えて、ねじれなどの力に対抗するには、耐力壁の全体バランスも重要です。
なお、構造上の役割がなく、空間を仕切るだけの壁を間仕切り壁といい、リフォームなどで取り外すことが可能ですが、耐力壁は撤去できません。
柱
柱とは、建物の軸組みで、土台に対して垂直に立てて、屋根や床の荷重を土台や基礎に伝えるものです。木造軸組工法やラーメン構造では、梁などとともに建物を支える最も重要な部材です。
柱の太さは、柱の位置や部屋の大きさ、支える重さによって決めます。木造2階建て以上の場合には、土台から軒まで通った継ぎ目のない「通し柱」が建物の四隅に使われます。「通し柱」は、上下階を構造的に一体化させて耐震性を高めるために重要なものです。各階ごとに梁や胴差しなどで区切られた柱を、「管柱(くだばしら)」といいます。「管柱」も各階の荷重を受ける構造体です。このほか、柱と柱の間に壁の補強のために入れる柱を「間柱(まばしら)」と呼びます。また、壁に取り付けた装飾用の柱を「付け柱」といいます。
梁
梁とは、建築物の骨組みのなかで、建物に対して水平方向に渡し、屋根や床など建物の上からの荷重を柱に伝えて建物を支える部材をいいます。柱と連結して支える梁を「大梁」、柱に直接つながっていない梁を「小梁」といいます。元来は、屋根の棟木(むなぎ)に対して直角に渡したものを梁と呼び、水平に渡したものは桁(けた)と呼んでいました。そのため、棟木と水平方向の建物の奥行きを梁方向、直角に交わる方向を桁方向といいます。また、屋根を支える梁を小屋梁(こやばり)、床を支える梁を床梁(ゆかばり)と呼びます。
木造建築では、梁には松や米松、杉などが使われます。また、「現し」といって、梁を露出させて意匠を施すものもあります。
屋根
屋根とは、風雨や日射から建物を守るために、建築物を覆うように設けられた構造物です。気候や風土によって特徴があり、形状や屋根材の種類もさまざまです。
屋根の形状および屋根材を決めるうえで、基本として求められるのが、耐震性、防水性、防火性、耐久性、断熱性などです。特に木造住宅の場合には、屋根材の重量によって、耐震性を確保するために構造上、壁の量を増やす必要などもあります。また、素材によって雨漏りを起こさないための屋根の勾配も規定されます。
屋根の形状には、切妻(きりづま)、寄棟(よせむね)、陸屋根(りくやね)、片流れ(かたながれ)、入母屋(いりもや)、方形(ほうぎょう)、鋸屋根(のこぎりやね)、バタフライなどがあります。
屋根材には、瓦などの粘土系、セメントなどを加工した化粧スレート、石を板状にした天然スレート、金属系のガルバリウム鋼板、銅板などがあります。
木造3階建て
木造3階建ては、かつては準防火地域では建てられないなど、建築が規制されていました。しかし、1987年の建築基準法改正で、一定の技術水準に適合する戸建住宅では準防火地域での建築が可能となり、その後は防火地域での建築も可能となりました。また、1998年の法改正では、木造3階建てアパートの建築も可能となっています。
ただし、木造3階建ては、高い耐火性能や構造計算などが義務付けられています。構造的にバランスが悪いと耐震性に問題を生じやすく、建物の間口に広い開口部を取ったり、耐力壁の位置などによってもバランスを欠くと、最悪の場合には欠陥住宅となってしまうこともあります。
住宅密集地などで土地を有効活用できることから、木造3階建ては年々増加しています。限られた敷地で居住スペースを確保できるものですが、耐火性能や耐震性能には十分な対策が不可欠です。