既存不適格建築物
きぞんふてきかくけんちくぶつ
既存不適格建築物とは、建築時には合法だったものの、その後に法律などが変わって適合しなくなった建物のことです。
既存不適格建築物とは、建築した時には
建築基準法などの法律に適合していたものが、その後、法改正があったり、
都市計画法が変更されたなどによって、現行の規定に適合しなくなった建物のことをいいます。
違反建築ではないので、そのまま使用しているかぎりは法的に問題ありません。また、増改築や大規模修繕などを伴わない
リフォームは可能です。しかし、建て替えや、
建築確認申請の必要な
リフォームでは、現在の基準に合わせる必要がでてきます。
ただし、構造耐力に関して不適格となっている既存不適格建築物については、増改築部分が現行基準に適合し、既存部分が一定の耐震性能を確保しているなどの一定条件を満たせば、増改築が認められる緩和措置があります。これは、既存建築ストックの大規模改修を円滑に行うための措置です。
建築基準法
建築基準法とは、建物を建てるときの基本的な法律です。建築物の敷地・構造・設備・用途の最低基準を示し、用途地域や日影規制などエリアによって守るべき事項などが定められています。建物の利用者や近隣住民の生命・健康・財産を守ることを目的に、1950年に施行されました。基準の具体的な技術水準などは、建築基準施行令や施行規則などで詳細が規定されています。また、基準が実効性をもつように、着工前の建築確認や工事中の中間検査、完了検査、違法建築物の是正措置なども定められています。
建築基準法はこれまでに何度も改定を重ねています。1981年には現在の耐震基準が導入、2003年にはシックハウス対策の規定導入、2007年には耐震偽装事件を受けて建築確認審査の厳格化が図られました。中古マンションを選ぶ際には、いつ建てられたかによって基準が異なるため、築年は大まかな安全性を見るときの一つの目安にもなります。
都市計画
都市計画とは、都市の健全な発展と自然環境の調和などにより、健康で文化的な都市空間を整備するための総合的な街づくりの計画です。都市計画法の規定による法的な規制力があり、秩序ある整備を図るための土地利用や都市施設の整備、市街地開発事業などが定められます。
都市計画を定める場所を都市計画区域と呼び、一定の開発行為を行う場合には都道府県知事の許可が必要となるなど、規制がかかります。
都市計画には、市街化区域と市街化調整区域の区分、地域地区、促進区域、遊休土地転換利用促進地区、被災市街地復興促進地域、都市施設、市街地開発事業、都市計画区域のマスタープラン、都市再開発方針等、市街地開発事業等予定区域、地区計画等があります。
リフォーム
リフォームとは、住宅を改築や増築することです。壁紙の張り替えなど室内の雰囲気を変える小規模なものから、トイレ、浴室、キッチンなどの設備を丸ごと取り換えたり、壁を取り払って間取り変更をするなど、大がかりなものまで幅広くあります。また、リフォームの目的も、耐震補強や高齢化に対応したバリアフリー化から、ライフスタイルに合わせた快適さを追求するものまで、さまざまです。
リフォーム費用は、既存建物の状態、リフォームの範囲や規模、採用する設備のグレードなどで大きく違ってきます。築年数が古いほどリフォーム目的も多様になり、高額化する傾向にあります。リフォームの市場が拡大するにつれ、消費者の不安を解消するために「リフォーム瑕疵(かし)保険」を利用したり、アフターサービスや保証期間を設けるなど、サービスの充実も見られます。
建築確認
建築確認とは、建物の建築工事に入る前に、その建築物が建築基準法や関連法令に適合しているかどうか、建築計画を審査することです。建築主は、工事前に、都道府県や市区町村に置かれている建築主事や指定確認検査期間に申請して、確認を受ける必要があります。
建築確認が必要なのは、特定の用途(映画館、病院、共同住宅等々)や一定規模の建築物、都市計画区域内や知事の指定区域内での建築や一定規模以上の増改築などです。
なお、マイホームを建築するときには、本来は施主が建築確認申請をしなければなりませんが、実際にはハウスメーカーが代わりに申請してくれるのが一般的です。また、新築物件の販売では、建築確認を受けていない物件は広告も販売もできません。
違反建築
違反建築とは、建築基準法や都市計画法、条例の規定などに違反している建物のことです。違法建築ともいいます。
違反建築には、建ぺい率や容積率、接道義務などに違反して建てられた建築物のほか、建てられたときは合法であったものの、増改築などによって違反してしまったもの、建築確認申請などの必要な手続きを行っていないものがあります。
中古物件では、違反建築の物件も珍しくありません。多くの場合は増改築などで違反してしまっているものです。違反建築でも売買は可能ですが、かなりのリスクを伴います。行政は違反建築の所有者に対して、建物の除去や移転、改築、使用禁止などの措置を講じることができるので、行政による指導に従わなければならない場合もあります。違反建築であっても内外装のリフォームは可能ですが、増築などで建築確認が必要な増改築はできません。また、建て直しをするときには、同等の建物は建てられません。もし道路が2m以上接していない土地の場合には、再建築はできず、このような物件は、不動産広告に「再建築不可」と表記することが義務付けられています。
加えて、違反建築では住宅ローンを借りられないことが多いようです。
それらのリスクを承知の上だとしても、耐震性などで問題がないか、安心して住める建物かどうか、厳密にチェックする必要があるでしょう。